クラシック音楽が「うつ病」の予防・緩和に役立つと言われる“2つの理由”
「うつ病」は日常生活の気力を奪ってしまう心の病であり、睡眠不足や神経衰弱が続いていると発症しやすいと言われています。
「最近夜眠れない」、「過度な倦怠感や罪悪感がある」といった場合は気付かぬうちにうつ病を患っている可能性も否定できません。
そこで有効だとされているのが、クラシック音楽です。今回は、うつ病の緩和や予防にクラシック音楽が役立つと言われる “2つの理由” を解説します。
1.クラシック音楽には歌詞がないため疲れた“左脳を休める”ことができる
物事の因果関係を考える際や人に物事をわかりやすく説明するときなど、論理的な思考をつかさどるのは左脳です。そのため、普段の日常生活においては左脳の仕事量が多く疲れやすいと言われています。
左脳を酷使し続けると血流が悪化して神経が衰弱し、うつ病の症状が重くなるリスクがあるので適度な休憩をとらなくてはいけません。
厚労省所管の独立行政法人が複数のうつ病患者に対して行った調査によると、うつ病が不調な時期は左脳の血流が低下している傾向が強いという結果が示されています。[注1]
そこで有効なのがクラシック音楽。クラシック音楽を聴くと右脳が刺激されるかわりに左脳が休まるので、左脳のリラクゼーションに適しているのです。
基本的にロックやポップスなどの曲はメロディーに歌詞が付いており、聴くとその歌詞の意味を無意識に理解しようとするため左脳が休まりません。
しかしクラシックは旋律に歌詞がないため、楽器の演奏時や絵を描くときなど芸術的な活動をつかさどる右脳が活発になり左脳が休まるのです。
またクラシックは「1/fゆらぎ」を多く含んでいる音楽でもあり、聴いているとα(アルファ)波というリラックスしているときに出る脳波を誘発する効果があります。
1/fゆらぎは海波や風といった、自然界のリズムが生み出す不規則な音に存在する周波数です。高いリラクゼーション効果があるため、音楽療法としても利用されています。
[注1]労働者健康安全機構:働く人々のうつ・疲労を脳の画像から観察可能に[pdf]
2.モーツァルトの曲が副交感神経を優位に!
不眠の解消に役立つ
国立保健医療科学院統括研究官の調査によると、慢性的に不眠の症状がある人はさまざまな肉体疾患・精神疾患と関連性があると示されています。[注2]
そこで不眠の症状がある方にお薦めしたいのが、モーツァルトの曲です。
私たちの心身は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの自律神経をそれぞれバランスよく自然に切り替えて生活しています。
交感神経は働いているときや家事をしているときなど、日中の活動時に優位となる緊張状態の自律神経です。
対して副交感神経は夜寝るときに優位となる緩和状態の自律神経であり、ホルモン分泌を促し疾患の治癒や免疫力を高める役割があります。
ところが、ストレスなどが原因で気持ちが高ぶっているとこの切り替えがうまくできなくなってしまいます。夜に副交感神経が優位にならないと寝つきが悪くなり、結果的に不眠となってしまうため心身の休息が妨げられてしまうのです。
モーツァルトの代表曲である「弦楽四重奏曲 第17番 K.458 第2楽章」や「バイオリン協奏曲 第4番 K.218 第3楽章」などには、副交感神経を刺激する4KHz付近の高周波が多く含まれています。
そのため、夜寝る前に聴けば副交感神経を優位に導き心身をリラックスさせることが可能なのです。
不眠はうつ病を引き起こすリスクもある、私たちの心身を蝕む大敵です。モーツァルトの曲を習慣的に聴き、不眠の解消や気力低下の予防に役立てていきましょう。
[注2]国立保健医療科学院統括研究官:日本における睡眠障害の頻度と健康影響[pdf]
聴く曲はそのときの気分に合わせて選ぼう!

クラシック音楽と一口に言ってもさまざまな曲があるので、どれを聴いたらいいか迷ってしまいますよね。そんな場合は、そのときの気分とマッチする曲を選ぶと良いでしょう。
たとえば「憂鬱な気分だから気持ちを高めたい」というとき。いきなり明るい雰囲気の曲を聴くことは効果的ではないと言われており、曲の雰囲気が気持ちと合っていないと逆にストレスを感じてしまうかもしれません。
気持ちが落ちているときは「ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 op.18 第1楽章」など暗い曲を先に聴き、次に「ドヴォルザーク/チェロ協奏曲 第1番 第1楽章」といった明るい曲を聴くという流れがお薦めです。
そのときの気分に合わせてクラシック音楽を聴くことで、不眠への対策や、うつ病の予防・緩和に役立たせてみてはいかがでしょうか。