~リトミックに学ぶ音楽のチカラ~
Vol.5『可能性の器を広げる“リトミック”』
リトミック講師:佐藤真衣

さて、リトミックのブログも最終回。
ここまで読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます。
いろんな方に感想をいただき、執筆の励みになっていました。
やはり、大人も子どももほめられるとがんばれますね!(笑)

sakura

冬が終わるといよいよ春です。
春には色とりどりの花が咲き、私たちの心を楽しませてくれます(花粉症に悩む人も多いのが現実ではありますが…苦笑)。
私が講師を務める保育園のリトミックのクラスも、学年が上がる前に1年間のまとめをする時期です。

子どもたちがリトミックを通してできるようになることは……

・思ったことを感じた通りに表現できること
・たくさんのスキンシップを通して思いやりを育むこと
・お友だちとの関わりで協調性を養うこと
・歌を上手に歌えるようになること
・リズムを感覚として理解すること
・数学的な考え方ができるようになること
・音楽を様々な観点から分析して表現できるようになること

などなどいろいろありますが、実際のところ、リトミックの試験などはないので(指導者になるための試験だったり、全く試験がない世界というわけではないのですが)、目に見えて成績があるわけでもなく、英語や体操のように、できるようになることを目的としていないリトミックは、成果がわかりにくいものかもしれません。

「結果を出さなければ意味がない」という社会の風潮が強いのも現実ですが、子どもたちが身体と心で育んでいるものは、大人が望む結果とは違う時も往々にしてあると思っています。

親子リトミックの現場で親御さんが一番苦しいのは、我が子が「やらない」時。
では、どうして我が子は「やらない」のでしょうか?

わからないから?
難しいから?
初めてだから?
体調が悪いから?
どんなふうに感じているか自分の中で消化し切れていないから?
お友だちのことが気になるから?
朝、お母さんに叱られたことがまだ気になっているから?

それは、当の本人にも説明のつかない、何かもやもやするものが原因だったりするのです。
子どもは自分の気持ちを整理するのに助けが必要です。子どもに限らず、大人もそういうことがありますよね。
なので、そんなときは、ぜひお子さんの声に耳を傾けてあげてください。

我が子の「やらない」という反応が想定外だったために、リトミックを続けられない方が意外にも多いと感じます。
そして、それが残念だな、勿体無いなと思うのです。

今でこそ、ピアノのような習い事は男の子も通っていますが、まだまだ圧倒的に女の子が多いのが現状です。

でもなぜか、社会人の趣味の音楽サークルは、男性のほうが多いように思います。

私も趣味でジャズバンドを楽しんでいますが、圧倒的に男性が多いです。
そして、そういった男性たちは口をそろえて「あのとき、ピアノを辞めなければ…」と言うのです。

ピアノという習い事は、30分以上のレッスンを先生と過ごし、もしかしたら、ずっとピアノの椅子に座っているかもしれません。

生徒さんの性格にもよりますが、男の子にとっては、ちょっと苦痛に感じる子もいるかもしれませんね。

私はピアノの講師でもあるのですが、男の子がピアノのレッスンをするときは、女の子とは違うやり方でないといけないなと思っています。

~リトミックに学ぶ音楽のチカラ~ Vol.5 『可能性の器を広げる“リトミック”』

いっぽう、リトミックでは音楽をいろんな角度から分析して表現するので、お友だちを観察したり、得意分野もあったり、尊重しあったり、ピアノや楽器などの演奏よりもっと広い視野で音楽を見ることができます。

そこには、女の子はもちろん、意外と男の子がのめり込んでいたりするのです。

あまり多くはないのですが、小学生のリトミックのクラスもあり、それは本当に難易度が高いです。

大人にも難しい内容だったりします。指導する側も一瞬も油断できないことが多い!

そんな小学生のリトミックのクラスですが、男女比は同じくらい。
彼らはできないことができるようになる快感をよく知っているので、とにかく根気強いです。

そして、もっと難しいことを挑戦してみたくなります。自分に自信がつき、何度も繰り返すとできるようになることを体感として知っているからです。

そんな彼らは、リトミックを卒業すると、音楽を深めるために楽器を習ったり、体を使って表現することを極めるために踊りを習ったり、即時的に反応する力を生かしてサッカーを始めたり。
耳も鍛えられているので、語学もいいですね。

リトミックは子どもの可能性の器を広げる教育と言われています。コップに注ぐ水の量を増やすよりも、器を広げるのです。

楽器の習い事は早期教育が良いと謳われていた時代もありますが、子どもの身体の小さな骨が完成する前に、大人用の楽器や教具を触れさせるより、豊かな感性を育て、6歳までに完成すると言われている聴覚細胞を刺激して、その後にやりたいことをじっくり考えても、遅くはないと思います!

初めてリトミックに接した親御さんは我が子が他の子と比較してできるかどうかがどうしても気になってしまうかもしれません。

でもでもでも!! ここは声を大にして言いたい!

恥ずかしがっているその瞳の奥で音楽を楽しんでいたりしませんか?
その煌めきを、見逃さないであげてください。

可能性を深める広げるリトミックの教育は、お子さんを豊かな人生へと導いてくれます。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

佐藤真衣profile_photo

Profile


佐藤真衣(さとう・まい)
3歳よりピアノを始める。大阪芸術大学にて作曲を学ぶ。リトミック研究センターディプロマA取得。

保育園幼稚園にてリトミック指導、派遣業務を行なう。ここわ保育園リトミック講師リーダー。ピノキオ幼児舎でのラーニングプログラム講師、及びミュージックフェスタの総合プロデューサーを務める。

児童養護施設そらいろ、リトミック講師。都立晴海総合高校、足立新田高校、王子総合高校非常勤講師。保育士を目指す高校生に、リトミックと保育現場について考える授業を行う。

ピノキオハウス音楽クラブ講師(学童にて小学生リトミック)。ニューミック音楽教室ピアノ講師(現在、5~82歳の25名の指導にあたる)。リトミックサークルにゅーみっく主宰。ニューミック音楽教室主宰。

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