~リトミックに学ぶ音楽のチカラ~
Vol.4『想像力・創造力』
リトミック講師:佐藤真衣

vol.4 『想像力・創造力』_1

立春から しばらく経つ中で未だ「ゆき」が降る地域もありますが、皆さまいかがお過ごしですか?

子どもたちが読む絵本の中には、「ゆき」が含まれるものがたくさんありますが、1歳くらいだと、「これは、あめ(雨)?」と質問してきます。
「これは、『ゆき』と言って、とっても寒い日に降ってくるの。白くて、キラキラしてとってもきれいなんだよ。今年も降るかな?」とお話しします。そんな「ゆき」を子どもたちはとっても楽しみにしています。

日本では、住んでいる場所で「ゆき」を長く体験し生活の一部になる子どももいれば、「ゆき」が特別なことの子どももいますね。

どちらにしてもこの時期は、リトミックのテーマとして「ゆき」が取り上げられることが多いです。「ゆき」を体験したことのない子でも、絵本や写真からイメージを膨らませ、音に合わせて表現を行います。

「ゆき」をテーマにした日本の歌もかわいらしい曲がたくさんありますね。

さて、具体的な活動内容ですが、
・ゆきになってみよう
・ゆきだるまを作ってみよう
・雪合戦ってどうやるの?!
・あれれ、ゆきは食べられるの?おいしいの??

イメージして表現することは、主体性を養います。
また具体的に視覚化することで、脳は刺激をうけ、想像力・創造力が豊かになります。


また、お友だちの表現を見ることで、「自分もあれをやってみたい」「〇〇ちゃんはすごいな」と、表現力の引き出しを増やしながら、お友だちの意見や表現を尊重する気持ちが養われます。

そして、それは将来、音楽やダンスなどで自分の感じたままを音にすることにつながっていきます。

リトミックは遊び感覚の過程の中に、音楽の要素が沢山入っているので、子どもたち大喜びで取り組みます。

楽しんで夢中になっていたら、気がついたらいつの間にか音感が育つのがリトミックのすごいところです。

私自身も指導をしていて、ある日突然、「えっ、この音わかるの??」と驚かされることは何度もあります。

リトミックで音と遊んでいたら絶対音感が知らないうちに身についていたのです。(注1:絶対音感には諸説あります/注2:リトミックをしていると必ず絶対音感がつくわけではありません)

さて、イメージすることは、表現することにつながっていくのですが、
イメージや表現は義務教育の中では後回しにされがちなのが現状かもしれません。

もちろん、道徳や学活などの授業もありますが、学校のメインは勉強であって、教わったものをどれだけ理解して吸収するかが重要視されています。

成績は点数で評価されることがほとんどですから、良い点をとることが目標で、塾に通っている子が多いことも頷けます。

しかしながら、社会に出たら学校での点数だけではほとんど役に立たないコミュニケーション力や想像力、創造力、表現力が必要な場面ばかりです。

ましてや、コンピューターの便利な世界が私たちのコミュニケーション能力を削いでいることは今や誰もが納得していることで、学校でも後回しにされてしまうこれらのことは、自然に身につくことを期待できない部分ではないかと思います。

さて、先ほどから何度か出てきている、「想像力」と「創造力」。

読み方は同じですが、どんな意味でしょうか?辞書を引いてみますと、
・「想像力」は現在自分の知識内にある事をもとにして心に思いを描く力
・「創造力」は現在存在しないものを新たにつくり出す力
とあります。

vol.4 『想像力・創造力』_2

リトミックは音楽に合わせて体を動かす「自由」な教育です。
教えられたことを教えられたとおりにやる、型や正解を探すという作業ではなく、答えとなる動きに正解がない作業と言っても過言ではありません。

正解があるものの中から正解を見つけ出すよりも、自分にとっての正解を見つけ出すことの方が難しく、そしてはるかに意味があります。
日常生活では自分の頭と心で考えて決断しなければいけないことが多いからです。
これが「想像力」につながります。

また、人前で自分の正解・意見を発言するということはなかなか難しいことですよね。

答えがわかっていても手を挙げて発言することは勇気が要る人が多くありませんか?

0歳は本当に大人のことをよく見ています。
1歳はマネっ子の天才、どんなことでも真似してくれるので、大人が自分が気がつかなかった癖に子どもに気がつかされることがよくあります。

2歳はマネもしながら、自分の表現を持ち始めます。

3歳は絵本や自分の体験を大切な人に認めてもらいたい気持ちが芽生え、さらに自分の表現のストックを増やしています。

もちろんこれは一例で、それぞれペースが違って当たり前。
子どもたちの気持ちに「私はこうしたい」という気持ちが育っていったときに、きちんとそれを表現できる場所を与えてあげられるのがリトミックなのかな、と思います。

保育園幼稚園に入る子が昔より増えたということは、集団生活を幼児期に体験している子が増えたということです。

集団生活の中で、どこまで個を表現できるか、クラスの先生や通う園の方針によるものが大きいので一概には言えませんが、もっともっと子どもたちが自由な表現をする機会が増えて、想像力と創造力を養っていけたら、日本の未来は明るいものではないかと、そんな風に思う今日このごろであります。

『音楽の力は偉大』改めてそれを実感しながら、今日もリトミックの現場で子どもたちと音で遊んできます。

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Profile

佐藤真衣(さとう・まい)
3歳よりピアノを始める。大阪芸術大学にて作曲を学ぶ。リトミック研究センターディプロマA取得。保育園幼稚園にてリトミック指導、派遣業務を行なう。ここわ保育園リトミック講師リーダー。ピノキオ幼児舎でのラーニングプログラム講師、及びミュージックフェスタの総合プロデューサーを務める。児童養護施設そらいろ、リトミック講師。都立晴海総合高校、足立新田高校、王子総合高校非常勤講師。保育士を目指す高校生に、リトミックと保育現場について考える授業を行う。ピノキオハウス音楽クラブ講師(学童にて小学生リトミック)。ニューミック音楽教室ピアノ講師(現在、5~82歳の25名の指導にあたる)。リトミックサークルにゅーみっく主宰。ニューミック音楽教室主宰。

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