踏み出せない人も、一休みの人も。
ちょっぴり「恋」に前向きになれる、
小さな提言



先月、初詣に出かけた神社の絵馬掛所(えまかけどころ)で、真新しい絵馬が並んでいるところをしばらく眺めていました。絵馬掛所とは、願いを書いた絵馬を飾る場所です。

合格祈願や開運と書かれた絵馬に混じって、
「恋の天使に出会いたい!」
こんなユニークなお願いを見つけました。

神社に天使という昨今の多様化を思わせる、個性的で大胆な組み合わせに思わず微笑んでしまいました。

まさにその日は太陽の光が冷たい空気にキラキラと輝いて、もしかしたら天使が境内を飛び交ってたかもしれない、よく晴れた午後でした。

例年、東京のお正月の三が日は晴れることが多く、気象データによると晴天の日は過去50年間で過半数以上を占めるそうです。
反面、日本海側に位置する新潟では、晴天の日の三が日は一日もなかったとのこと。
筆者の暮らす地域も温暖で、過去のお正月は晴天だった記憶しかありません。

以前に北海道の雪深い地方で生まれ育ったかたに「雪が降る土地で暮らしてみたい」と話したところ、「果てしなく、白しか見えない世界が何ヶ月も続くことに耐えられる?」と真顔で尋ねられて、ふと黙り込んだことを覚えています。

たしかに雪がたくさん降れば積もり、その積雪は何ヶ月も続き、雪下ろしや雪かきという大変な作業が待っているのが雪国のならわしです。
その上、雪が吹雪けばコンビニに行ったり散歩をしたりなど、気軽に外に出掛けることは難しいでしょう。

濡れた窓の外に見える真っ白な景色に囲まれて生活することは、雪が降ることが稀な土地に生きている筆者には、気持ちが滅入ってしまい、数日で根を上げてしまうかもしれません。

温暖な土地に慣れているかたがもし北国で冬を過ごすなら、冬ならではの時間の過ごし方を用意しておく必要があるかもしれません。

恋愛は一休み…なあなたは、恋愛小説を読もう




「おすすめの小説はありますか?」
生徒さんからこの質問をいただくことがよくあります。筆者はそんなとき恋愛小説を推奨します。

冬は読書に適する季節。
インドアで過ごす時間が増えることと、あともう一つ、冬は最も人恋しくなる季節だから。

恋愛したいけれどなかなか動き出せないと感じているかたや、今は恋愛はしなくてもいいかな、と思っているかたどちらにも物語を読むことで、恋愛の素晴らしさを心の奥の片隅にそっと置いておいていただけたら、と思うのです。

ちょうど先日、女性雑誌で「最も恋したくなる季節は?」というアンケートを目にしました。
冬に恋愛がしたくなるその理由に、以下のようなコメントがありました。

  • 寒い時は誰かの近くにいたくなる、手を繋ぎたくなる

  • クリスマスに始まりバレンタインまで、カップルのイベントがある

  • ルミネーションや冬の夜空など、輝いているものを恋人と眺めたくなる


たしかに納得するものばかりです。
この季節、吐く息が混じり合うように近づいて歩くカップルを見ていると、そこだけ空気の温度が違っているかのように感じます。

イルミネーションのきらめく街角で、信号待ちをしながら微笑んでいる二人の笑顔はイルミネーションに負けないくらい眩しくて、その二人の恋がどんな風に進展していくのかはわからないのですが、きっと二人のストーリーの1ページに、冬の恋は記されるのだろうと思います。

知っていますか?冬に出現する「天使の囁き」


さて、“ダイヤモンドダスト”をご存知でしょうか?
ダイヤモンドダストとは、極寒の時期に、ある一定の気象条件が揃ったときだけに出現する、美しい自然の現象です。

ダイヤモンドダストは細氷(さいひょう)とも呼ばれています。
大気中の水蒸気が昇華(凝華)してできた、ごく小さな氷晶(氷の結晶)が降るのです。

空中で舞い散るこの無数の氷の結晶が、光に反射してキラキラと輝く様子は、晴れた日だけでなく、人工的に造ることができて、照明次第では夜にも見ることができるそうです。

そしてダイヤモンドダストは、もう一つの名前として「天使の囁き」とも呼ばれているのです。

真冬のカップルが手をつないで見つめあったり、頬を寄せているシーンは、ささやきながら互いの名を呼んでいるかのように見えます。

もしかしたら、「昨日なに食べた?」などと、他愛もない会話をしているのかもしれませんが、二人の吐息が混じり合う距離の会話は、二人だけの秘密です。

恋愛はある条件下で引きおこる?




恋愛の魅力は“秘密めいた欲求”だと筆者は思います。
そのベールの内側にある繊細な心の流れは、自分と相手だけがいる閉ざされた部屋のなかだけに引き起こります。

その部屋のなかで、何を感じて何を望むのか、それは極めて個人的なもう一つの、自分だけの心の世界なのです。

その部屋の恋心の扉には、相手の名前が書かれています。
その扉を開くとき、この人を好きになってもいいの?と自分に問いかける瞬間があるでしょう。「それを決めるのは自分でしょう?」と、心は反応するのです。

恋愛も、ダイヤモンドダストの発生のように、ある一定の条件で引きおこっているかもしれません。
それは次の3つが多かれ少なかれ存在するでしょう。たとえば、

  • 淋しいとき。

  • 日常に満たされていないとき。

  • 何かを求めながら、それがわからないでいるとき。


他にもあるかもしれませんが、この”秘密めいた欲求”は恋の扉の向こう側に待つストーリーを知りたくさせます。

この人を好きになったらどうなるのだろう?という疑問の回答は、好きになることでしか得ることができません。
こうして、相手の名前が書かれた恋の扉をお互いがそれぞれ開いていくのです。

また、人は物や趣味に恋をすることもあります。
コンサートや旅行に出かけたくなったり、素敵なワンピースやバッグが欲しくなったりするときにも、先ほどの3つの条件が揃っているのです。甘いケーキやタピオカに恋をしてしまうこともあるでしょう。
食べたい、したい、逢いたいなど、人が何かを望むときのドキドキは、どれもがもれなく“恋”かもしれません。

ところで、ダイヤモンドダストの記念日が2月にあることをご存知のかたは少ないのではないでしょうか。

「天使の囁き記念日」は、1978年(昭和53年)2月17日に北海道幌加内町母子里(もしり)で日本最寒記録の-41.2℃を観測したことを記念し、1994年に制定された記念日だそう。

もしあなたが欲しいものを見つけたとしたら、天使が耳元であなたの名前を囁くかもしれませんね。

ちなみに神社では、絵馬の主が誰なのかがわからないと神様は願いを叶えてくださらないそうです。
恋の扉に記された相手の名前、絵馬に書いたあなたの名前、どちらも冬の小説の登場人物。

ぜひ近いうちに、あなたも物語の主役を体験してみてください。